『 no title 』


セ メントに閉じ込められた
ブ ルウの空が
ル ビイ色に染まるまで
ス ピイドはそのまま
ス カラアもベクトルも
ネ ガティブをはらんで
イ カロスのごとくに
プ ライドさえ溶かして


























『 おかあさま 』


女がかじった木の実のように
この星は青く青く 罪をはらんで
娘のかじったりんごのように
この星は青く青く 毒をはらんで
嗚呼 残酷な
おかあさま



























『 おゆるしを 』


愛すべきあの人が
私の知らない遠い楽園で
幸福に微笑む
そんな悪夢に
今朝もまた 汗だくで
飛び起きたのです
ああ かみさま
かみさま


























『 リピートアフタミー 』


聞き飽きた先生の「リピートアフタミー」
閉じ込めたままの私のコトバは
繰り返す英単語に
溶かされてゆくのか



























『 目を閉じて 』


まるで泣いているみたいに
静かに目を閉じていたあの人
まぶたの裏にうつるのは
いつだって幸福なあのころ



























『 幸せになりたかった 』


悲しみは繰り返されて 愛は憎しみのまま
闇の底にいざなうのは 赤い血のせせらぎ
「幸せになりたかった」
残された男が呟いた
背徳は彼を狂わせ
優しさは彼を暴いた
「幸せになりたかった」
彼の手にあの日々はもうない


























『 病院 』


私は死ぬだろう
牙を抜かれた狼よりも
あわれな獣に成り果てて
私は死ぬだろう
見知らぬ部屋の
かたいベッドの上で
たったひとり
白い静寂の中


























『 ない 』


泣けない 泣かない あなたがいない
泣きたい 泣けない 笑えもしない
戻れない 戻らない あなたがいない
戻りたい 戻れない ここにはなにも


























『 走る不安 』


胸の中で不安が駆ける
どこまでも どこまでも 遠く
何もないところまで
往きたがっている
そのくせ楽園は
はるか後方にあり
そこへの道は
永遠に閉ざされている


























『 ふたりきりの孤独 』


意味もなく 鼻の奥がつんとして
静寂の中 目を潤ませるけど
こぼれぬままに それは乾いて
何もなかったように
私はふるまってしまう
泣きたいけれど ここには
人がいる