『弔いの言葉』 弔いの言葉の なんと無価値なことだろう あなたが私にくれた 100分の1にも満たない 『既に断ち切られた』 許しあう言葉など 悪戯に表面を飾るだけ 一度翳ってしまったものは もう二度とは戻らない ふたりを断絶した壁に溝に亀裂に世界 見て見ぬふりで 気付かぬふりで 諦めなくては いずれ傷つき傷つけてしまうのに 『あんたが好きだからだ』 泣いている彼女の肩を抱いてやることが 一体なんの解決になろう どれだけ言葉を飾っても その悲しみを知るのは彼女だけ ならば その背を蹴飛ばして さっさと立てよ と怒鳴るのが きっと私のお役目だろうが 嫌われたくないばっかりに 口をつぐんて 見ている私は どれだけ季節が過ぎようと しがない 卑怯な 傍観者 『結局は踏み出せなかった私を』 何のために生まれたのかって 飽きもせず自問してた あのころの恐怖を 忘れてしまったわけじゃない 記憶は日々 薄れて消えるけど 覚えておこう できるなら いつまでも 何もかもの終末を夢見て 何度となくベランダに立ち尽くした私を 『the reason』 私は忘れてしまった 生まれ堕ちたときに 腹の底から慟哭して嘆いた その罪深さと悲しみの理由を 『逃亡を阻む枷』 自分などより苦しい思いをしている人が それでも笑って懸命に生きている人たちが 山ほどいると知っていながら 腐るほどいると知っていながら ここから無様に逃げ出すことなど ああ… 『白猫は笑う』 気だるい午後はさ 気分屋のネコみたく いつも遠くのブロック塀を ゆうゆうと歩いてたのにさ 気だるい午後がさ 気分屋のネコみたく あの垣根をこえて 俺んとこにやってきたのさ そして そのとき 俺はようやく おひさまってやつは 真っ白なんだと 気がついたのさ 『忘れたのでなく永遠に失くした』 悲しみが悲しみたろうとし 喜びが喜び以外の何ものでもなかった あの頃 ぼくらは確かに 太陽が輝く 本当の理由を知っていたはずだ 『窓際の席』 風を受けて揺れる 真っ白な カァテン 風を受けて揺れる きみの黒い しっぽ 風も受けず揺れる ぼくの弱い こころ こんなにも傍にいるのに 此処からじゃ背中しか見えない 『夢に人生を費やす理由』 宇宙(そら)を行く汽車のように 止められないものがあって それはたぶん 消し屑のマーブル模様みたく どうでもいいものであって 歓喜の歌も 絶望の歔欷も 結局は汽笛に 掻き消されるのだけど 最後の最後の最後の瞬間 少しでも笑えたなら 上出来だと思うのだ |