『許されざる者』


流しても流しても決して
決して取り消すことなどできないと知る
涙などでは まして無意味な血などでは
苦しくて苦しくてそれでも
前に進まなければ 何も守れないと知る
この貧弱な両腕は 罪を重ねることしか 嗚呼
請うても叫んでも決して
決して赦される日など来ないと知る
抱えて背負って 生きていくほか道などないと



























『しかし真実の花』


偽りの春に騙されて 咲いてしまった薄紅の花
ひとときのまやかしに浸る 甘すぎる誘惑に溺れて
春遠い冷えた風にさらわれ 散りゆくと知っているのに
嗚呼 もう つぼみには戻れない
冬は孤独すぎて 春が恋しすぎて 温もりを焦がれて
間違いと知りながら 僅かな日差しに手を出した
偽りの春に魅入られて 咲いてしまった薄紅の...




























『幸福と忘却の恐怖』


悲しみが怖いんじゃない 怖いのは幸福
幸せはあたしをダメにする 温もりはあたしを腐らせる
後悔するのは怖くない 怖いのは忘却
あの日々があたしから消えゆく 微笑んだあなたが遠ざかる



























『それを、劣等感という』


それは、ときに心凍えるほど冷たく、
ときに身を焦がすほど熱く、
無邪気な子どもの正義のように光り輝いて、
醜いあたしを、容赦なく照らし出すのだ。
目を覆うことさえ許されない光、それを、




























『さあ勝利を宣言しよう』


やらなきゃいけないことがあるのに
たくさんあるのに
やりたいことが増えて
どんどん増えて
息が出来なくて 苦しくなって
大声で叫ぶの わーーーーって
でも 勘違いしないで
SOSなんかじゃないわ
これは 宣戦布告
弱い自分に 敗けたくはない




























『花の唄、僕の夢』


憎しみにも似てる
愛されたいと願う
道端に咲いた花の唄

憎しみにも似てた
愛されたいと願った
ほこりにまみれた僕の夢



























『朝と昼と夜の嘆き』


まだ 泣くことは赦されていない
潤う月が密やかに呻く
まだ 弱音が赦されるはずもない
嘆いた太陽は輝くのをやめた
あの景色はどこへ行った
ツクリモノなど不必要だった あの頃の涙は



























『これは世界への呪詛だ』


ひとの痛みを理解できるなどとは
口が裂けても 言えやしない
その悲しみは彼のもので そっちの苦痛は彼女のものだ
慰めのことばなど 偽善でいろどった自己満足
醜くて仕方なくて 私はやがて口をつぐんだ

そうさ これは逃げさ

悲しみ苦しむ友人の 背中蹴飛ばして叱咤する
それが役目と知っていて 口をつぐんだ 臆病者さ


ひとりでいるのが寂しいなどと 嗚呼
どの面さげて 言えようか
悲しみのひとつも 苦痛のひとつも
私はいまだ 知らないでいるというのに
これは単なる甘えだと 分かっているからタチが悪い
道ならばそこにあるのに 蹲ってしまいたいんだ

そうさ これは逃げさ

母でも父でも教師でもなく 自分のためにするべきことと
それが役目と知っていて やりたくないと 駄々をこねてる

どうぞ好きなだけ 卑怯者と呼んでくれ
そんなもの 誰より自分が分かってる

私が求めるのは 炎の上にたつ安らぎの冷たさ

醜く捻じ曲がった私の性根は
まったき善など 信じちゃいない
カミサマはきっと偉大なペテン師
まっすぐな正義ほど ぞっとするものはない

だから私は 色いりまじり捻じ曲がる 醜く深い悪を愛した

笑うなら 笑うがいい
お前もいつか その手の中が 空であることに気付くだろう
握っていたものが こぼれ落ちたことに
握ったはずのものが まったくの幻だったことに
それに気付かなかった己の愚かさに

きっと気付く日がくる



























『中身のない美しい殻』


渇いたくちびるに潤いを
僕の刃に血飛沫を
赤いマボロシに誘われ
夜の迷路におっこちた
愛しのハンプティ・ダンプティ
お前は今頃どこにいる
床に散らばる愛の欠片を
僕の靴底が踏み荒らす



























『争いは永遠に』


怒りさえ呑みこんで 巨大化する狂気
さあ今こそ 力の限り歓喜を叫べ
それだけが始まりの合図だ
そうして我らは 血塗れの歴史を繰り返す