『イヌ科につき』 狼になって 獰猛なほど真っ直ぐに 強く気高く生きてみたいけれど そのために この薄汚い腐った社会から 尻尾を巻いて逃げ出せば 私は永遠に 狼にはなれない 孤独で惨めな野良犬のまま 道端で死んでゆくのだ 『no title』 言葉とは 真実を語るものではなく 音の連なりで 残酷な真実を包むためのもの 真実とは決してひとつではなく 宇宙中の生命の数だけある ひとつの大きな力そのもの 『君らの目にはどう映る?』 彼らの笑顔や言葉には どれだけ本当があるんだろう 彼らを大切だと思うのは 私だけで 彼らは 私が思うほど 私を必要とはしていないんじゃないのかと ときどき不安になって すがりたくなる私は きっと最低で 醜い 『独りで生きるには辛すぎる』 いっそ絶望してしまいたかった 何も感じなくなるくらいに 熱く焼けた石を 飲み下すような この途方もない痛みを 悲しみと詠むと知っていたなら 俺は生など 選びはしなかった あんたと一緒に死ねばよかった 『あなたは優しすぎる』 あなたの優しさ(ぬくもり)は ときどき傷に障るから 結局いちばん心地よい 彼の優しさ(つめたさ)に帰ってゆくわたしを どうぞ好きなだけ 責めてください あなたは優しすぎる 『忘れたくない』 あなたが唯一残して行った この本を あなたの定位置に座って ペェジが擦り切れるくらい 何度も読み返しているわたしを 親しい友人たちは 愚かだと言って笑い、怒り、 忘れろと言って、泣く 『狂気のロマンチスト?』 会ったこともなく 名前も知らず その存在の証明はどこにもなく ただ予感でしかない あなたを 想ってはひとり泣いているわたしは きっと狂っているのでしょう ただ どうしてでしょう 見知らぬあなたが恋しくて もう一度逢いたいと 無意識につぶやくのは 『“キミを忘れない”』 “忘れない”なんて 陳腐な言葉だと思ってた でも 涙が止まらない今 やっとわかった この想いを失くしたくない 痛みから零れ落ちた つぶやきのことを言うんだね 『reincarnation』 生まれ堕ちたとき あなたに逢うために生まれてきたのだと 泣いた あなたに廻り逢えたとき あなたを愛するために生きてきたのだと 泣いた 遠い日の約束を あなたは覚えていますか 『もう何もかも遅すぎる』 胸のずっとずっと奥のところが 抉られたみたいに 痛くて 涙がにじむのに どうしてなのか分からなくて 馬鹿らしくなって大声で笑う わたしはきっと狂っているのだ 今頃辛くなるなんて もう すべて手遅れなのに |