は別に、友だちがいないわけではない。
 ただ、所属するグループがないだけだ。
 温和なハッフルパフには、虐めなどはない。助けを求めればみんな手を貸してくれるし、基本的には親切だった。
 だだ、なんとなく、自身が彼らに馴染めなかっただけだ。
 昔から、あまり人間関係が得意ではなかった。少し人とは、テンポが違うのだ。自分でも分かっている。それが人を苛々させることも、分かっていた。しかし、こればかりはどうしようもない。
 だから、孤立したのは誰が悪いわけでもない。
 寂しいと思わないわけでもなかったが、一人で過ごすのには慣れていたし、人とあまり話さなければ親切な誰かに迷惑をかけたり、言葉の壁にもどかしさを感じたりしなくてすむから、楽だった。

 それでも、人の会話を聞くことで、随分英語は上達していた。
 暇なときは英和辞典などを読んで、出来る限り勉強した。
 しかし、イギリスの習慣はやはり、日本の感覚とはずれがある。
 だから今日まで、クリスマスは友人同士で贈りものを贈りあうのが普通だなんて、まったく知らなかった。

「日本は、サンタに扮した親からか、恋人同士ぐらいだもんなあ」

 一人になってから、少し独り言が多くなった気がする。
 それにしても、それに気付いたのが当日でなくてよかったと、は安堵を噛み締めた。
 クリスマスまで、あと2日だ。
 とりあえず、急遽、ルームメイトには、色違いで便せんのセットを買った。
 問題は、ひょんなことから友人になってくれた、スリザリンの彼。

「何がほしいんだろう?」

 頭を抱えた。

 彼と会う機会は少ない。
 だが、図書室に行くとかなりの率で彼はいて、嫌そうにはするけれど宿題を手伝ってくれた。
 英語が不得意な分、宿題には時間がかかる。レポートなど、地獄だ。彼は積極的ではないが、的確に間違いを指摘してくれるからありがたい。スペルミスなども容赦なく指摘してくれるから、こちらとしては勉強にもなる。
 ぶっきらぼうで、口数は少ないけれど、いい人だなあとは思う。
 ……・いい人、という単語は、すごく似合わない気がするけれど。
 この間は、ホグズミートで声もかけてくれた。一人のほうが楽だと割り切っていたはずだったが、それがとても嬉しかった。


 クリスマスプレゼントは、悩んだ末、少し高かったが銀のネクタイピンを買った。


 彼は何かくれるつもりだろうかと、少し胸を弾ませた。







 しかし。

「これは………流石に予想外でした」

 朝目覚めて、ルームメイトから聞いていたプレゼントの山は、人より随分小さかったが、それなりにあった。
 まずは、ルームメイト3人から。香水と、髪留めと、ブックカバー。
 それぞれ礼を言っておいた。
 それから、お世話になった小学校の先生から、手紙と一緒に写真立てが。(彼女も実は魔女だったのだと、あとから聞いて知った)
 母の友人だったというマクゴナガル先生からも、温かそうな手袋が届いていた。
 そして、一際大きな、というか長さのある包み。
 どきどきしながら包みを開けた。

 落ち着いた色の木製の柄。
 あるのかないのか分からないくらい、控えめなレース。
 幼い頃に見たウェディングドレスみたいに、真っ白な布地。


「これ、日傘、だよね」


 開いてみた。
 間違いない。日傘だ。

 メッセージカードがついていた。



『  道の真ん中を堂々と歩け  』



 癖はあるけれど見やすい彼の字で、たった一言。
 その意味が分かった途端、こみあげてきた嬉しさといったら、言葉にできない。

 空が怖いと言った、それを覚えていてくれたことが。

 壁際を、屋根を求めて歩かなくてもよくなったことが。

 そうして彼が、自分を気遣ってくれたことが。

 とてつもなく嬉しかった。
 顔がにやけて仕方なかった。





 そうしてわたしは、広すぎる空から身を守る、真っ白な盾を手に入れた。




















2005/12/28

 今回は短めに。
 ってかやっと出たよ、日傘。