〜 お読みになる前に 〜 ハリポタ長編夢「RED EYES」の過去の話になっています。 名前変換はありません。 オリジナルキャラクターが多く、創設者4人もオリジナル設定です。 原作に沿わない部分もあるかもしれませんが、 あっても目をつぶってくださるという方だけ、先にお進みください。 … 赤眼でお馴染み、黒猫の昔の名。ボイドに懐いている。(推定2××歳) ボイド … ヘルガ“付き”の獣。大熊。みんなのお父さん的存在。(推定18××歳) クラウン … サラザール“付き”の獣。蛇。性格に多少難あり。(推定4××歳) ルスラン … ゴドリック“付き”の獣。ライオン。みんなのお兄さん的存在。(推定12××歳) ルック・D・ベリー … ロウェナ“付き”の獣。鷹。謎の多い最年長者。(1900〜?歳) |
「サリィ!」 普段どおりのきびきびした早足で歩いていた男は、親友の声に振り返った。 「かボイド知らねえ?」 黒猫と穴熊の名に、サラザールは怪訝な顔をする。 「どうかしたのか」 「ちょっと“森”に行くのに、鼻が効くやつ連れて行きたくてな」 「ルスランじゃなくて、か?」 かの生真面目なライオンは彼“付き”の獣だ。普通、ゴドリックが連れて行くとしたら彼だろう。しかし、ゴドリックは少し気まずげな顔をして肩を竦めた。 「今朝、寝ぼけてうっかり尻尾踏んじまって…」 「………」 彼はまだご機嫌斜め、ということらしい。 呆れた視線に、ゴドリックは苦笑いのような照れ笑いのような曖昧な顔をした。 「“赤いの”は懲りないねぇ」 サラザールの胸元から、するりと滑り出てきた蛇が笑った。 「んなこと言うなよ、クラウン。俺も一応自覚はしてんだから」 “赤いの”と呼ばれたゴドリックは、その燃えるような髪をばりばりと掻きながら視線を泳がせた。 「…まったくお前は…、……この時間帯なら十中八九、ヘルガのところだろう」 思わず出かかった説教を呑み込んで、サラザールが話を戻す。 「俺もそう思って行ってみたんだけど、ヘルガも部屋にいねえんだわ」 サラザールは瞬きするほどの間だけ思いを巡らせて、それから一つ頷いた。心当たりは、ある。 「ついて来い」 「おう」 「あそこだ」 「………」 ゴドリックは呆気に取られて黙ってそれを見ていたが、やがて顔には堪えきれない笑みが浮かんだ。サラザールも、小さく微笑んだ。 温かい春の日差しが降り注ぐ中、湖のほとりの開けたくさはらで、でん、と豪快に転がった大熊の巨体。 その腹の上で、気持ち良さげに寝息を立てる小さな黒猫と、ブロンドの髪の少女。 熊の腹の上、ではないものの、近くで拗ねていたはずのライオンも丸くなっている。 そしてそのライオンを枕に、広げた本で顔を覆って眠っているらしい黒髪の女性もいる。彼女“付き”の鷹、誇り高きルック・D・ベリーは、遥か高い上空で優雅に弧を描いている。 「俺もぉ〜」 とサラザールの胸元から飛び出してきたクラウンは、するするとくさはらを這って進み、ライオンの首に巻きついて落ち着いた。ルスランはちらりと目を開いたが、何も言わなかった。慣れだ。 ゴドリックとサラザールは、同時に顔を見合わせた。 「予定は?」 「モチ、変更」 ゴドリックはにやりと笑うと、長い手足を投げ出してごろんと大の字になった。 サラザールはくつくつと笑いながら、その隣に腰を下ろした。 目を閉じると、春の風が吹いた。 どこからか、懐かしい花の匂いがした。 2005/11/12 |