〜 お読みになる前に 〜 ハリポタ長編夢「RED EYES」の未来の話になっています。 名前変換はありません。 スネイプ家は四人家族です。息子ひとり、娘ひとりです。 息子は、外は父親似です。そっくりです。中身は今は亡き(母方の)祖父似です。(笑) シスコン、マザコン、ファザコンの三拍子が揃ってます。 娘は、外も中も母親似です。でもときどき父の面影も。 ブラコン、マザコン、ファザコンでやっぱり三拍子揃ってます。 そんな家族です。 OK! バッチ来い! って方は↓へお進みください。 |
01 「ピクニックに行きたい!」 と言い出したのは娘だったか息子だったか、はたまた麗しの我が愚妻殿だったか。 とにかく久々に取れた休日、目を覚ましてみれば空は快晴で、それに比例して彼らの目はきらきらと、それはもうあの偉大なる校長に何か教わってきたのではないかと恐ろしくなるほどに煌めいていたのである。家でゆっくり研究がしたいという意見は3対1で即却下。これだから民主主義は…。 愛車を走らせて向かった先は馴染みの開けた草原で。 妻がつくった弁当は、バスケットの中。大きな水筒には冷やした紅茶。それより一回り小さい水筒には、子どもらが選んだジュース。日なたにばかりいると赤目の彼らはすぐ具合を悪くするため、わざわざ大きなパラソルも持ってきた。 「お父さーん! バドミントンの羽根お母さんが忘れちゃった!」 「……確か車のトランクにサッカーボールと野球ボールが入れっぱなしじゃなかったか?」 「あ、そっか。お兄ちゃーん、お母さーん! サッカーボールと野球ボールならあるってぇー!」 「じゃ、キャッチボールしよっかー!」 「うん!」 2人とも忙しないところは母親似だな。間違いない。 パラソルを片手にかついで、もう一方にはバスケットを握って、としているうちに子どもたちは…もとい子どもたちとその馬鹿な母親は手をつないで駆け出している。(結局私は荷物持ちか。…もう慣れた。何も言うまい。)否、駆けるという表現は多少語弊があるかもしれない。あれはやたら猛スピードのスキップだ。 「転ぶからやめなさい!」 「だいじょっ……ぎゃあ!」「わあ!」「うべっ!」 言ったそばから3人一遍盛大に転んだ。 手を繋いだ他の2人を道連れにしたのは、娘だったのか息子だったのか、はたまた多少脳細胞が不足しているらしい麗しの我が愚妻殿だったのか。私の目には最年長者の彼女に見えたのだが、気のせいだったということにしておきたい。ヤツも30を過ぎたいい大人のはずなんだが。 取りあえず荷物をそこに置いて、大きく溜息を吐くと、数歩離れた車に薬を取りに戻った。 調合した傷薬を持ってきておいて良かった。 苦労している旦那サン。子どもを3人抱えた母親のような心境です。 お題「緑の草原に麦色のバスケッドでみんなでスキップ」より 02 休日の朝の過ごし方と言えば決まっている。 朝食は手早くすませる。その後静かに朝刊を読む。それから一日が始まるのだ。 当たり前のことだ。 当たり前のことなのだが、その当たり前が通らなくなったのは一体いつからだっただろう。 娘「それでね、それでね、お母さん。お兄ちゃんそのときアンナと一緒にね」 息子「違うよ、お母さん! 僕別にアンナが好きとかそんなんじゃないよ! あれはアンナが僕に宿題のことを」 娘「うっそだー! だってお兄ちゃんずうっとにやにやしてたじゃん」 息子「そんなことないよ! それに、お前だってこの間、エディと遊んでたじゃないか」 娘「エディとは友達だもん! それに途中でお兄ちゃんが乱入してきて遊ぶどころじゃなかったでしょ!」 息子「当たり前だろ! 大事な妹をエディなんかに渡すもんか!」 娘「わたしだってお兄ちゃんをアンナになんてあげないもん!」 妻「あーはいはい、分かったから。ブラコンでシスコンでどうしようもない兄妹だってのはよく分かったから」 息子「あー!! お母さんプリン食べてるー!」 娘「ずっるーいっ! わたしも食べるー!」 息子「あ、こらっ! 貴様、我輩のプリンに何をするつもりかね、この馬鹿娘がっ! グリフィンドール10点減点!」 妻「こら、お父さんのモノマネするのはやめなさい。本当にお父さんみたいな陰険な大人になっちゃったらどうするの」 息子「ええーっ、僕お父さんみたいな大人になりたーい!」 娘「わたしもお父さんみたいな人と結婚したーい!」 妻「…それだけはやめてください」 頼むから朝刊ぐらい静かに読ませてくれ。 幸せには違いないけど、ちょっと可哀相な父親。(しかも低血圧) お題「朝刊ぐらい静かに読ませてくれ」より。 03 ゴ、ゴ、ゴ、 ノック……らしき音。 「おとうさぁーん」 いつもはノックもなしに入ってくる、4つになった娘の声。ノック(?)の音源が足元だったのは気のせいではあるまい。あれは先日買ってやったばかりの(うさぎを模したデザインの妙にもこもこした)スリッパを履いた足で、ドアを蹴った音だ。(ちなみに兄のはライオンだ) 「あけてぇー。コーヒーもってきたよー」 そう言われれば、少し喉が渇いてきたところだ。 杖を振って、開けてやった。キイ、と蝶番が少し軋んだ。今度油を差しておこう。 「それコワイって言ったぁー」 「ああ…そうだったな。すまない」 ひとりでにドアが開くのは、オバケ屋敷のようで怖いらしい。(母親と一緒だ) 「はい、これ」 こぼさないようにと気を付けているのだろう、亀のような歩みでゆっくりと寄ってきた。 「ああ…………」 手渡されたマグカップを何の気なしに覗き込んだ途端、思考が凍りついた。 「………………………………………………なんだこれは」 「こーひー」 こんな禍々しい色をした液体、“コーヒーだったもの”と呼ぶことさえ躊躇われる。 「…何を入れたのか知ってるか?」 「えぇっとねー」 小さな顔が無邪気に首を捻り、難しそうな顔をして指折り“材料”を並べ立てていく。 「おかあさんがね、コーヒーをおとうさんに持ってって言ったからね、コーヒーは苦いよって言ったらね、おかあさんがお砂糖をたくさんいれてね、それでね、あまくなったねって言ったらね、じゃあ辛くしようねって言っておかあさんかタバスコを入れてね、辛くなったねって言ったらはちみつを入れてね、ええと、それから、塩と、こしょうと、こーちゃと、ミルクと、こちゅじゃんと、おみそと、オレンジジュースと、りんごじゅーすと、チョコレートと、ニガヨモギと、アコナイトと、うるふずべーんと、トリカブトのねっこ」 奴は私を殺す気か。 「お母さんを呼んできなさい」 「はーい!」 そしてキッチンに戻った娘が見たのは「旅に出ます。探さないでください。」という書置きだったというオチ。 その後、失踪した妻を2時間で見つけ出す夫。お説教はたっぷり1時間と12分。 お題「そのコーヒーは何味だ」より。 04 「ペットが欲しい…?」 食後のことだ。 珍しく真剣な顔をした息子と娘が(普段は不真面目な顔をしているという意味ではないが)、そんな話を持ち出してきた。 「却下」 「「えーーーっ」」 途端に上がった不満の声に、片眉を吊り上げる。 「どうしてー? なんでダメなのー?」 7つになったばかりの娘が、ぷうっと母親そっくりのふくれっつらをする。兄がほとんど無意識にその頬をつついた。ぷすっと間抜けな音がしてまんまるかった妹の輪郭がしぼんだ。むっとした妹が兄の手をぺちんと叩いた。 「どうしてもだ」 2人の様子に笑いがこみあげるのを上手く押し殺しながら、頑として首を縦には振らない。 「なんでまた急に…」 濡れた手をエプロンで拭いながらキッチンから戻って来た妻が問う。 「だって…」 息子が気まずげに上目遣いになる。 「サライネンには、僕ホグワーツに行くから」 つまり、妹が寂しくないように、ということだろう。……優しいというか、妹思いというか、シスコンというか。 妻と顔を見合わせる。彼女の赤い目は「いいんじゃないか」と言っている。内心溜息を吐きながら、まあ、梟くらいだったら、と声には出さず妥協する。妻には伝わったらしい。嬉しそうに微笑んだ。 「で、何がいいんだ」 ぱあっと顔を輝かせた2人に微苦笑を漏らす。 「何がいい?」 兄が妹に尋ねる。 妹は「うーん、えっとぉー、えっとねー」と頭を抱えるようにして長い間悩んだあと、ぱっと顔を上げた。 「カンガルー!!」 沈黙が流れた。 「「 却下 」」 珍しく妻と意見が合った。 長女は外も中も9割方母親似です。それは疑いようも無い事実です。 お題「カンガルーを飼ってみたい」より 05 ときどき顔を上げて子供たちの姿を視界に入れながら、テラスで本を読んでいた。 「おとーさん」 気がつけば、両手と言わずあちこちを砂だらけにした2人が、きらきらした目でこちらを見上げている。この目は未だに少し苦手だ。 「お料理つくったの!」 「いっしょに!」 「……そうか」 私の前に並べられているざっと10枚ばかりのプラスチックの皿の上で、何ともいえない形状にされている砂の塊がそうなのだろう。 「こちらからご紹介しまーす!」 娘が元気よく一番左の皿を持ち上げた。年の割りに弁の立つ息子が、プラスチックのスプーンをマイク代わりに解説を始める。 「A! 美味しそうなチャーハン!」 砂がこんもりと半球型に盛られている。確かにまあ、そう見えなくもない。 「B! 美味しそうなたまごスープ!」 水の中に大量の砂を入れるとはスープになるらしい。便利な世の中だ。 「C! 美味しそうなエビチリ!」 はっきりいって、どの辺りがエビなのか分からない。 「D! 美味しそうなシュウマイ!」 少し渇いてひびの入った壊れかけの砂団子がこんもりと積まれている。そんなに食べたいのか、シュウマイ。 「E! 美味しそうな肉まん!」 シュウマイが大きくなった感じだ。しかもこれがまた量が多い。そんなに好きなのか、肉まん。 「F! 美味しそうな餃子!」 それらしい形に整えられたものが平たい皿にズラリと並んでいる。先程からあまり代わり映えがしない。 「G! 美味しそうな酢豚!」 小石が水を含んだ砂にまぶされている感じだ。 「H! 美味しそうな杏仁豆腐!」 随分ぱさぱさに乾いた黒胡麻風味の杏仁豆腐だな。 「I! 美味しそうなプリン!」 でかいなオイ。というか一つだけ中華料理と関係ないんだが、そこは突っ込むべきなのか。それとも食べたかっただけなのか。どうなんだ。 黙って見ていると、私そっくりの息子と妻そっくりの娘の(とは言え少し二人は目元が似通っている)、この中華料理+αのオンステージを始めてからやり終えるまで少しも変わらなかった笑顔が同時に向けられた。 「「選んで!!」」 なぜ。 「おとーさん、プリン好きでしょ?」 やたらでかい砂の塊の皿を差し出されて、思わず顔が引き攣る。 喰えと? その小さな石の粒を? 「………………………お父さんはさっきサンドイッチを食べてお腹がいっぱいだ。その分、お母さんはいつもどんなときも空腹だから持っていってあげなさい。きっと喜ぶ」 「「はーい」」 聞き分けはいい。 「ああ、ちょっと待て」 皿を運ぼうとした息子に声をかけた。 「お母さんの好物は知っているだろうな?」 「モチロン!」 息子は元気よく笑った。 「プリンでしょ?」 私は満足して、また読書に戻った。あとで胃薬はつくっておいてやろう。 ダンナサマ、ささやかな日々の仕返し。相変わらず性格は陰険ですね。 お題「わたしの創作料理、A〜Iさあ選べ!」より。 |
読んでくださったすべての方に、心からの感謝を。 |